障害厚生年金をもらっている人から離婚分割を受けることができる場合がある
障害年金をもらっている人と、離婚をした場合の離婚分割についてみていきましょう。
二人は事実婚期間はないものとし、婚姻期間(法律婚の期間)について離婚分割を行うものとします。
夫と離婚したので、離婚分割をしたいんです。
障害年金をもらっている人でも、障害年金は影響ないと聞いたので、もらえるだけもらいたいんです。
私は、2級の障害厚生年金をもらっています。
障害年金は離婚分割しても、金額が変わらないと聞いたので、妻に、100%あげても良いですよ。
う〜ん。
いくつか、制度と認識が違うところがありますので、一緒に考えていきましょう。
障害厚生年金と離婚分割のポイント
離婚分割を行うにあたって、分割の対象期間が、障害厚生年金の計算の対象となっている期間かどうかによって分割できる方法が変わってきます。
0)障害基礎年金は厚生年金部分ではないため、離婚分割を行なっても金額に影響はない。障害厚生年金は離婚分割を行うと、年金額に影響がある場合がある。
1)障害厚生年金の計算の基礎となっている期間は3号分割はできないが、合意分割は可能
2)H20年4月以降の期間で、障害厚生年金の計算の基礎となっていない期間は、3号分割も可能
3)障害厚生年金の計算の基礎となっている期間を分割した場合、障害厚生年金の計算の元となる標準報酬月額が変更されるため、障害厚生年金の年金額が変更(減額)される可能性がある。
4)元配偶者に3号分割をされても、障害厚生年金の金額に影響はない。(障害厚生年金の計算の基礎となる期間は3号分割ができないため)
そして、離婚分割は最高で50%までしか按分することができません。
では、お二人の場合の離婚分割について「合意分割」した場合と、「3号分割」をした場合についてみていきましょう。
二人の年金加入記録等
婚姻期間 昭和60年4月から令和5年10月
(昭和60年4月4日婚姻、令和5年11月3日離婚)
正月(元おっと) 昭和55年5月から平成27年10月まで厚生年金加入
冬子(元妻) 昭和61年4月から27年10月まで国民年金3号被保険者
障害年金の初診日 平成20年4月1日
障害認定日 平成21年10月1日
Pattern1)「合意分割」を行う場合
合意分割とは、双方が合意して婚姻期間について按分(分け合うパーセント)を決めた上で、標準報酬月額について分け合う方法。障害年金の計算の基礎となっている期間=昭和55年5月から平成21年10月分
婚姻期間の離婚分割の対象期間=昭和60年4月から平成27年10月(婚姻期間厚生年金期間のみ対象のため)
離婚分割を行なった場合、障害厚生年金の計算の対象期間となっている昭和60年4月から平成21年10月分の標準報酬月額が改定されるため、障害年金が減額されます。
Pattern1)「3号分割」を行う場合
二人が合意分割を行わず、妻が3号分割を行う場合(妻が元夫の合意なく、強制的に50%もらう場合)
平成20年4月以降の国民年金3号被保険者の期間で、障害厚生年金の計算の基礎となっていない期間は3号分割が可能です。
平成20年4月から平成21年10月分までは障害厚生年金の計算の基礎となっているため、3号分割はできません。
平成21年11月分から平成27年10月分までは、国民年金第三号被保険者のため3号分割が可能です。
3号分割を行なっても、元配偶者の障害厚生年金の年金額に影響はありません。
障害厚生年金の計算の基礎となっている期間についても、離婚分割をしたい場合は、合意分割パターン1の方法が必要です。
あと、障害厚生年金に配偶者加給金が加算されていれば、外す手続きが必要ですよ。離婚後内縁にあるなどの場合は、年金事務所に相談してください。
障害年金の金額が減ると生活が苦しくなるからなぁ。
どのくらい減額されるんだろ、、、、。
でも私も、離婚して今は老齢基礎年金のみだから自分の年金だけでは生活できないわ。
夫婦で話し合ってください。
お二人とも55歳以上ですから、「年金分割のための情報提供請求書」(様式第650号)を年金事務所に提出して、50%以下の按分にした場合の見込み額を出してもらうと良いと思いますよ。
様式は日本年金機構HPより↓↓
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/todokesho/kyotsu/20181011-05.files/12_650.pdf
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