はじめに
「子育て中なのに、年金に子どもの加算がつかない」——そんな不公平が、令和7年(2025年)の年金制度改正で大きく解消されます。
令和10年(2028年)4月から、子の加算の対象となる年金の種類が広がり、加算を受けやすくなります。
この記事では、
- そもそも「子の加算」とは何か
- 改正前と改正後で何がどう変わるのか
- 夫婦両方が年金を受けているケースの変化
- 繰り上げ・繰り下げ受給を考えている方への注意点
をわかりやすく解説します。
「子の加算」とは
年金における子の加算とは、年金を受け取っている方に一定の年齢以下の子どもがいる場合に、年金額に上乗せされる加算のことです。
ここでいう「子」とは、
- 18歳になった年度の末日(3月31日)までの子
- または障害がある場合は20歳未満の子
を指します。
子の加算は子育て中の家庭の生活を年金でもサポートするための制度ですが、現行では加算がある年金とない年金が混在しており、不公平が生じていました。
改正前と改正後の比較——対象年金が3種類増える

現行(改正前)の状況
現在、子の加算が設けられている年金は以下の3種類のみです。
| 年金の種類 | 子の加算 |
|---|---|
| 老齢基礎年金 | なし |
| 老齢厚生年金 | あり(ただし加入期間240月以上が必要) |
| 障害基礎年金 | あり |
| 障害厚生年金 | なし |
| 遺族基礎年金 | あり |
| 遺族厚生年金 | なし |
改正後(令和10年4月〜)の状況
改正後は、6種類すべての年金に子の加算が設けられます。
| 年金の種類 | 現行 | 改正後 |
|---|---|---|
| 老齢基礎年金 | なし | 新設 |
| 老齢厚生年金 | あり(240月以上) | あり(120月以上に緩和) |
| 障害基礎年金 | あり | あり |
| 障害厚生年金 | なし | 新設 |
| 遺族基礎年金 | あり | あり |
| 遺族厚生年金 | なし | 新設 |
加算額の変更
改正後の子の加算額は、子ども1人あたり年間281,700円(2024年度額)です。
現行では1人目・2人目と3人目以降で加算額が異なっていましたが、改正後は子どもの人数にかかわらず1人あたり同額に統一されます。また、一人あたりの金額も増額されます。
老齢厚生年金の加算要件が大幅に緩和される

現行では、老齢厚生年金に子の加算を受けるためには、厚生年金の加入期間が240月(20年)以上必要でした。
これが改正後は120月(10年)以上に緩和されます。
対象となる方
- 令和10年4月1日以降に老齢厚生年金の受給権が発生する方
- 具体的には昭和38年4月2日以降生まれの方が対象
注意点
65歳時点で加入期間が120月に満たない方が、65歳以降の改定(退職改定・70歳改定など)によって120月以上になっても、子の加算の対象にはなりません。あくまで65歳時点での加入期間(老齢厚生年金の受給権発生年齢時点の加入期間)が基準となります。
夫婦それぞれが子が加算された年金を受けているケースはどうなる?【重要】
現行のルール
現在、夫婦がそれぞれ障害年金などを受け取っている場合、同じ一人の子に対して夫婦それぞれが子の加算を受け取れるケースがあります。
改正後のルール
改正後は、子を主として生計を維持している方のみが子の加算の対象となります。
夫婦両方が加算の対象となる年金を受けていても、一人の子に対して加算が支給されるのは1人分のみとなります。
Q:「主として生計を維持している」とはどう判断するのですか?
A: 夫婦のうち、子どもの生活を主に支えている方が対象となります。具体的な判断基準については年金事務所にご確認ください。
この改正で影響を受けるケース
| ケース | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 夫:障害基礎年金 妻:障害基礎年金 子1人 | 夫婦それぞれに子の加算が支給 | 主として生計を維持している方のみに支給 |
| 夫:老齢厚生年金(240月以上) 妻:障害基礎年金 子1人 | 夫婦それぞれに子の加算が支給 | 主として生計を維持している方のみに支給 |
厚生年金と基礎年金、どちらから加算が支給される?

基本ルール:厚生年金が優先
厚生年金と基礎年金の両方で子の加算の対象となる場合は、厚生年金の子の加算が優先されます。基礎年金の子の加算は支給停止となります。
以下のような組み合わせが該当します。
- 老齢基礎年金+老齢厚生年金
- 障害基礎年金+障害厚生年金
- 障害基礎年金+老齢厚生年金
- 遺族基礎年金+遺族厚生年金
例外①:老齢厚生年金が在職中などにより全額支給停止になる場合
在職中で老齢厚生年金が全額支給停止となっている場合は、老齢基礎年金から子の加算が支給されます。
例外②:老齢厚生年金を繰り下げ中の場合
老齢厚生年金を繰り下げている待機期間中は、老齢基礎年金から子の加算が支給されます。
繰り上げ・繰り下げを考えている方は要注意
繰り上げ受給をする場合
令和10年3月以前に老齢基礎年金または老齢厚生年金を繰り上げた場合は、改正後の子の加算の対象外となります。
子どもがいる方で繰り上げを検討している場合は、子の加算を受けられなくなることを踏まえて慎重に判断する必要があります。
繰り下げ受給をする場合
老齢厚生年金を繰り下げている待機期間中は、老齢基礎年金から子の加算が支給されます。
ただし、繰り下げによる年金増額分と子の加算額を合わせて比較し、どちらが有利かを計算したうえで判断することが重要です。繰り下げの損得計算は、子の加算の有無によって結論が変わる場合があります。
まとめ:今回の改正のポイント整理
今回の改正の核心は、「年金を受け取っている子育て世帯を、年金の種類にかかわらず公平にサポートする」という考え方です。
プラスの変化
- 老齢基礎年金・障害厚生年金・遺族厚生年金にも子の加算が新設される
- 老齢厚生年金の加入期間要件が240月から120月に緩和される
- 加算額が子どもの人数にかかわらず1人あたり同額に統一される
注意が必要な変化
- 夫婦それぞれが加算を受けていたケースは、主として生計を維持している方のみの支給に変わる
- 令和10年3月以前に繰り上げ受給をすると、子の加算を受けられなくなる
- 繰り下げ受給を検討する際は子の加算を含めた損得計算が必要になる
「自分のケースはどうなるのか」と気になる方は、お早めに年金事務所にご相談されることをおすすめします。
本記事は日本年金機構・厚生労働省の公開資料をもとに作成しています。今後の政令・省令等の公表により詳細が変わる場合があります。最新情報は日本年金機構または年金事務所にてご確認ください。