意外と知られていない国民年金独自の遺族給付!寡婦年金と死亡一時金

目次

はじめに

国民年金の加入中に亡くなった方の配偶者や子が受け取れる遺族基礎年金。

それ以外には、国民年金は遺族給付がないというイメージの方も多いと思います。

実は、国民年金には

 ✔️寡婦年金
 ✔️死亡一時金

という「国民年金独自の遺族給付」があります。

(厚生年金に同様の制度はありません。)

この2つは、厚生年金に加入していた人の遺族厚生年金との関係で、

「どれがもらえる?」
「同時にもらえる?」
「選ぶ必要がある?」

といった質問を多く受けます。

今回の記事では、2025年(令和7年)時点の制度内容に基づいて、

寡婦年金・死亡一時金の制度と遺族年金との関係

をわかりやすく整理していきたいと思います。

寡婦年金とは
(妻に支給される国民年金独自の遺族年金)

寡婦年金は、国民年金第1号被保険者(自営業・農業・フリーランスなど)の夫が亡くなったときに、
その夫に生計を維持されていた妻(事実婚を含む)に支給される年金です。

寡婦年金の主な条件

  • 夫の保険料納付済期間+免除期間が 10年以上 ある
  • 夫と 10年以上婚姻関係(事実婚含む) にあった
  • 夫が老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取っていなかった
  • 夫が繰上げの老齢基礎年金を受け取っていない
  • 夫の死亡日時点で、妻が繰上げの老齢基礎年金を受け取っていない
ととさん

遺族基礎年金を妻が受け取っていても、寡婦年金は受け取れます。

寡婦年金の金額

夫の国民年金第1号被保険者期間に基づく老齢基礎年金額の 4分の3

厚生年金・共済組合期間・国民年金第3号被保険者期間を除きます。

例)
夫の国民年金第1号被保険者としての老齢基礎年金見込み額が80万円なら、寡婦年金は60万円/年となります。

死亡一時金とは(納付期間36か月以上で支給)

死亡一時金は、国民年金第1号被保険者として

保険料を36か月以上納めていた人

が、老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取らずに亡くなった場合に、その遺族に

一度だけ支給される一時金 です。

主な条件

  • 保険料納付月数が36か月以上
  • 亡くなった人が老齢基礎年金・障害基礎年金を受け取っていなかった
  • 遺族が遺族基礎年金を受けとらない
  • 優先順位 
     配偶者 → 子 → 父母 → 孫 → 祖父母 → 兄弟姉妹

兄弟がもらえる遺族給付は、未支給年金と死亡一時金です。

支給額(納付月数による)

納付月数に応じて12万円〜32万円
(+付加保険料納付36月以上納付で、8,500円加算)

寡婦年金・死亡一時金と遺族年金の関係

ここが非常に重要なポイントです。

「遺族厚生年金」や「遺族基礎年金」を受け取る場合に、
寡婦年金・死亡一時金はどうなるかを整理してみましょう。

遺族厚生年金を受け取る場合

寡婦年金・死亡一時金のどちらも受け取ることができます。

遺族厚生年金は「厚生年金の制度」、
寡婦年金・死亡一時金は「国民年金の制度」に基づく給付です。

つまり、制度が異なるため、遺族厚生年金を受け取っても、寡婦年金・死亡一時金のそれぞれの受け取れる権利が発生します。

遺族基礎年金を受け取る場合

寡婦年金は請求できますが、死亡一時金は受け取れません。

遺族基礎年金は「同じ国民年金の枠内」で支給されるため、
死亡一時金と両方受け取ることはできません。

一方で、寡婦年金は60歳以降に別枠として請求可能 です。

つまり、遺族基礎年金の支給が終了した後(子の18歳最初の年度末など)、
その後に寡婦年金へ切り替えることができます。

遺族基礎年金と寡婦年金を同じ時期に受け取れる場合は、いずれか一つを選んで受け取ります。

老齢年金を繰上げた場合

寡婦年金と繰上げた老齢年金は選択になります。

寡婦年金を受け取ることができる妻が、自分の老齢年金を65歳前に繰上げ請求していた場合、寡婦年金か繰上げした老齢年金かのいずれか一つを選び受け取ります。

どちらか一方を選ぶ形になりますので、
繰上げ請求をする前に

「将来、寡婦年金の可能性があるか」

をよく確認しておくことが大切です。

まとめ表

状況寡婦年金死亡一時金備考
遺族厚生年金の受給権あり〇 受給可〇 受給可制度が異なるため併給可
遺族基礎年金の受給権あり〇 請求可
いずれか一つを選択して受給
× 両方の請求はできない死亡一時金とは選択
妻が老齢年金を繰上げ受給中×請求不可〇 請求可
夫が老齢・障害基礎年金受給済× 受給不可× 受給不可

寡婦年金を受け取っている妻が、自身の老齢基礎年金を請求した場合、寡婦年金と老齢基礎年金は選択となります。

チェックしてみよう

多くの方が

「遺族厚生年金・遺族基礎年金をもらっているから、もう寡婦年金は関係ない」
と思いがちですが、

実は 国民年金の納付歴がある場合は寡婦年金・死亡一時金も対象になる 可能性があります。

また、夫が亡くなるよりも前に、妻自身の老齢基礎年金を繰上げ請求してしまうと、寡婦年金がもらえなくなるケースもあるため、

「繰上げの前に寡婦年金の該当可能性をチェック」

することが重要です。

まとめ

意外と知られていない、国民年金の独自給付「寡婦年金」と「死亡一時金」

名前は聞いたことがあっても、実際の仕組みや対象者まで知っている方は少ないかもしれません。

今回の記事を通して、
「こんな制度もあるんだ」
「自分や家族にも関係するかもしれない」
そんなふうに、少しでも知識を深めてもらえたら嬉しいです。

年金制度を知ることは、“損をしないための第一歩”。

将来の安心につながる大切な学びとして、知っていただけたら嬉しいです。

年金制度は複雑です💦
いくつかの権利に該当することもあります。
迷ったときは、年金事務所や専門の方に相談するのが安心です。

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