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仁義なき戦い2 本妻vs内縁の妻

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本妻と内縁の妻 どちらが遺族年金を受け取ることができるか

遺族年金は、戸籍上の妻にも戸籍上の妻でない事実婚関係にある内縁の妻も請求することが可能です。

しかし、基本的には戸籍上の妻である本妻が優先されます。

ただし、戸籍上の妻(以降本妻とします)と夫との婚姻関係が「その実体を全く失ったものとなっているときに限り、内縁関係にある者を事実婚関係にある者として認定」するとし、内縁の妻に遺族年金が支払われる場合があります

具体的にどのような状態が「その実態を全く失ったもの」とするのかを検討してみましょう。

仁義太郎 享年70歳。令和5年10月14日死亡。厚生年金に450月加入。本妻と内縁の妻がいた。

内子

はぁ。今日でようやく四十九日の法要も終わる。無事にあの人も天国へ行ったかしら。ずっと法事で忙しかったから、忘れていたけれど、年金の手続きに行かなきゃね。

🚶🚶🚶年金事務所へ🚶🚶🚶

夫と、入籍はしておりませんでしたが、遺族年金が請求できると聞いて手続きに来ました。手続きについて教えてください。

職員

内縁関係にある方も遺族年金の請求は可能です。しかし、データを確認しましたところ、すでに本妻である配偶者の方から遺族年金が請求され、決定しております

それはおかしいでしょう。40年以上、太郎さんと一緒に生活を営んでおり、死亡前の入院した時の世話や、介護などは私が行なっておりました。私が実質妻みたいなものです。他に受け取れる人がいるわけないでしょ!?
その決定を取り消して私に支払ってください。

決定を取り消すことはすぐにはできません💦

戸籍上の妻と内縁の妻がいることを重婚的内縁関係といいますが、基本的には戸籍上の妻が優位なのです。
そのため、戸籍上の妻と亡くなられた方の婚姻関係が「その実体を全く失ったものとなっているときに限り、内縁関係にある者を事実婚関係にある者として認定するという決まりになっています。

はぁ??具体的にはどういうことを言っているのか全くわかりませんわ。言葉が難しすぎるのよ。

「届出による婚姻関係がその実体を全く失ったものとなっているとき」とは?

 次の条件を満たす場合などがあります。

1)本妻の方と亡くなられた方にが「離婚の合意に基づいて夫婦としての共同生活を廃止していると認められるが戸籍上離婚の届出をしていないとき」

2)本妻の方か亡くなられた方のいずれかの「悪意の遺棄によって夫婦としての共同生活が行われていない場合であって、その状態が長期間(おおむね10年程度以上)継続し、」内縁の妻と亡くなられた方の「生活関係がそのまま固定していると認められるとき」

私と仁義太郎さんはねもうかれこれ40年以上一緒に住んでいるのよ。
向こうの本妻の本子さんとはね、とうの昔に縁が切れているのよ。だから、私がもらう権利があるでしょう。

本妻の方と亡くなられた仁義太郎さんの「夫婦としての共同生活の状態にない」となるためには、次のすべての要件に該当する必要があります。

「夫婦としての共同生活の状態にない」とは?

次の条件に全て該当するすることを要するとされています。

ア 当事者が住居を異にすること

イ 当事者間に経済的な依存関係が反復して存在していないこと

ウ 当事者間の意思の疎通をあらわす音信又は訪問等の事実が反復して存在していないこと

そんなの、全て該当するに決まってます。

それは、本妻の方とお客様に調査させていただいて、最終的に決定することになると思います。

参考:重婚的内縁関係に係る調査とは?

重婚的内縁関係にある者を「婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者」として認定するには、届出による婚姻関係(戸籍上の夫婦関係)がその実体を全く失ったものとなっていることを確認することが必要であり、このため、次の調査を行い、その結果を総合的に勘案して事実婚関係の認定を行うものとすることとされています。

なお、この調査は、相手方の任意の協力を得て行うものであるとともに、本人のプライバシーに関係する問題でもあるので、慎重に取り扱うものとすることとなっています。

① 戸籍上の配偶者に対して、主として次の事項について、婚姻関係の実態を調査すること。

なお、戸籍上の配偶者の住所は、戸籍の附票(住民基本台帳法第16条~第20条参照)により確認することとすること。

ア 別居の開始時期及びその期間

イ 離婚についての合意の有無

ウ 別居期間中における経済的な依存関係の状況

エ 別居期間中における音信、訪問等の状況

② 前記①による調査によっても、なお不明な点がある場合には、いわゆる内縁関係にある者に対しても調査を行うこと。

③ 厚生年金保険法及び船員保険法の未支給の保険給付並びに国民年金法の未支給年金についても同様の取扱いとすること。

トトさん事務所にて

私は、40年以上も太郎さんと一緒に生活してきたのよ。
それに、亡くなる前も介護も私がしてたし、葬儀だって大変な手続きを行ったわ。太郎さんの年金と給与で生活をずっと暮らしてきて、今更本妻と調査なんて納得できないわ。

トトさん

そうですね、、。
やはり、基本的には本妻が有利でしょうから、内子さんはまず、仁義太郎さんと内子さんが40年以上一緒に生活しているということを「客観的に」証明していく必要があると思います。
住民票や賃貸契約の状況、光熱費の支払や、確定申告の写しなど何か資料はありますか?

住民票を一緒にしたのは5年前くらいからです。でも、私と太郎さんが一緒に住んできたアパートは太郎さんの名義で借りています。そこに私も同居人となっていたはずです。

では、まず賃貸契約書を探してください。古い年賀状が仁義太郎さんと内子さんの連名で届いているとか、入院の保証人に内子さんがなっているとか、葬儀の喪主に内子さんがなっているなど。
あるいは、葬儀関係の支払いを内子さんが支払ったとか、健康保険や税法上の扶養に入っている証明など何かありませんか。

葬儀の喪主は世間体のため、太郎さんの息子としました。しかし、諸々の葬儀の支払いや彼の介護をしてきたから、色々探してみます。

内子が年金事務所に提出した書類

・仁義太郎と内子のそれぞれの戸籍謄本 (重婚確認のため)

・仁義太郎の戸籍の附票、内子の住民票謄本 (住所確認のため)

・平成元年に契約された賃貸契約書の写し (仁義太郎が契約者、内子が同居人として契約されたもの)

・年賀状10年分くらい 仁義太郎と内子あてに連名できているもの

・葬儀式場の領収書 内子宛

・入院承諾書 仁義太郎が入院者、内子が保証人となっているもの

しかし、年金事務所から遺族年金の却下通知が届きました。なぜか一緒に検討してみましょう。

本妻が提出した書類

・仁義太郎と本子の戸籍謄本 (婚姻時から死亡時まで婚姻関係にあり)

・仁義太郎と本子の戸籍の附票 (仁義太郎と本子が住民票は5年前まで同一住所)

・本子の住民票住所の家と土地が仁義太郎の名義であることがわかる登記事項証明書

・本子の住民票住所の光熱費の口座が全て仁義太郎であることがわかる書類

・仁義太郎から本子に対して、仁義太郎が令和5年8月に入院するまで口座に、月5万円の送金が確認できる通帳のコピー

・仁義太郎さんが65歳(令和5年)退職するまで本子さんは仁義太郎さんの健康保険の扶養となっていたことの申し出

今回のケースでは、仁義太郎さんから本妻への継続的な婚姻関係の実態は無くなっていると判断されなかったと思われます。

注意!!これは、個人的に想定した架空の話ですので、実際の年金事務所が上記状態でどの様な判断をするかは、不明であることを申し添えます🙇‍♀️🙇🙇

生計維持関係の認定や、事実婚関係の認定などについては「生計維持・生計同一関係等に係る認定基準及びその取扱いについて」平成23年3月23日 年金発0323第1号、改正平成27年9月30日 年発0930第11号に規定されています。⇩⇩⇩

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb7210&dataType=1&pageNo=1

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