老齢年金・遺族年金・障害年金は同時にもらえる?併給できるパターンと注意点

目次

はじめに

年金のご相談でよくある質問。

夫の遺族年金をもらっていますが、私自身の老齢年金も受け取れますか?

障害年金と老齢年金、両方もらえるんですか?

答えはこうです。

公的年金では、原則、支給事由(老齢・障害・遺族)が異なる2つ以上の年金を同時に受け取ることはできません。

つまり、どちらかを選ぶ必要があるのです。

ただし――
65歳以降は、いくつかの組み合わせで複数の年金を併給(同時受給)できるケースがあります。

この記事では、

・なぜ「1人1年金」なのか
・どんな組み合わせなら併給できるのか
・選択の際の注意点

を、わかりやすく図解しながら解説します。

日本の公的年金の仕組み

日本の公的年金制度は「2階建て構造」になっています。

日本年金機構HPより)

そのため、
「老齢基礎年金+老齢厚生年金」や
「障害基礎年金+障害厚生年金」など、
同じ支給事由(老齢・障害・遺族)の年金であれば基本“セット”として受取ります。

2つ以上の年金が受けられる場合の説明図

日本年金機構HPより)

年金の受取るルール

✔️ 65歳までは必ず「1人1年金」=1種類の年金を受取る
✔️ 65歳以上は組合わせて受取れる場合がある(併給)

原則、異なる支給事由(たとえば「老齢」と「遺族」)の年金を同時に受けることはできません。

このように2つ以上の年金を受ける権利が発生した場合は、本人がいずれかを選択して受け取ります。
(「年金受給権者 選択申出書」の提出が必要です)

ただし、65歳前と65歳以上では受け取り方が違います。

65歳まで 1人1年金

65歳までは、複数の年金の受給権があっても、必ず「一種類の年金」のみを選択して受取ることになります。

① 遺族年金を受け取っている人が老齢年金を受けとる場合(65歳まで)

ととさん

このほか、障害年金を受け取っていた人が、遺族年金をもらえるようになった場合も、65歳まではいずれか一つを選択して受け取ります。

⚠️ 障害年金・遺族年金は非課税
⚠️ 老齢年金は課税対象
となるので、それも考慮して選択する必要があります。

② 同じ支給事由で複数の年金が発生した場合

配偶者と子の遺族厚生年金、父と母の遺族基礎年金の選択に関する説明図

日本年金機構HPより)

65歳以降 併給できるケースあり

65歳を過ぎると、複数の年金を同時に受取れる場合があります。

基本的には基礎年金同士、厚生年金同士は同時に受け取れません。

① 老齢給付 × 遺族給付

  • 老齢基礎年金 + 遺族厚生年金
     → 両方受け取れます。
  • 老齢厚生年金 + 遺族厚生年金
     → 老齢厚生年金が高ければ遺族厚生年金は全額停止。
      老齢厚生年金より遺族厚生年金が高ければ「差額分」だけ支給。
支給事由が異なる2つ以上の年金の説明図

日本年金機構H Pより)

② 老齢給付 × 障害給付(2級以上)

65歳以降は、次のいずれかを選択できます。

  • 障害基礎年金 + 老齢厚生年金
  • 老齢基礎年金 + 老齢厚生年金
  • 障害基礎年金+障害厚生年金
ととさん

障害基礎年金と老齢基礎年金の2つの基礎年金は併給できません。
また、老齢基礎年金+障害厚生年金の組み合わせはできません。

支給事由が異なる2つ以上の年金の説明図

日本年金機構HPより)

③障害給付 (2級以上)× 遺族給付

65歳以降は、次のいずれかを選択します。

  • 障害基礎年金 + 障害厚生年金
  • 障害厚生年金 + 遺族厚生年金
支給事由が異なる2つ以上の年金の説明図

日本年金機構HPより)

遺族基礎年金の上に障害厚生年金はもらえません。

また、障害基礎年金➕遺族厚生年金を受け取るとき、遺族厚生年金に中高齢寡婦加算が加算されている場合、中高齢寡婦加算はもらえなくなります。

④老齢年金×遺族年金×障害年金

3種類全て受け取れる受取り方が一つあります。それは

障害基礎年金+老齢厚生年金+遺族厚生年金

です。

⚠️ 障害基礎年金と遺族厚生年金を一緒に受取る場合、遺族厚生年金に加算される経過的寡婦加算は減額されます。

⚠️ 見落としがちな障害厚生年金3級

障害厚生年金3級の場合は、何かの年金と一緒に受け取ることはできず、必ず選択することになります。

例) 65歳以上の老齢基礎年金と老齢厚生年金、障害厚生年金3級を受け取れる権利があるとき

→ 「老齢基礎年金+老齢厚生年金」 
 または 「障害厚生年金3級」のいずれかを選択して受け取ります。

おわりに

年金は「長く納めた人が多くもらえる」と思われがちですが、

権利があるもの全て受け取れるわけではありません。

実際は「どの年金を、どのタイミングで選ぶか」で受取額が変わります。

特に、ポイントは「65歳を境に、受け取れる年金が変わる」ということです。

特に、遺族年金を受けている方・障害年金を受けている方は、老齢年金の受給開始年齢を迎える前に、年金事務所で何を受取るのが有利か、受け取り方法と金額の確認をしておくことをお勧めします。

「知らなかった」では済まされないのが年金。
知ることで、損を防ぎ、未来を守ることができます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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