はじめに
「入籍していないけれど、長年一緒に暮らしている」
「結婚という形にこだわらないけれど、家族として生活している」
――そんな「事実婚」や「内縁関係」で暮らすご夫婦が増えています。
ただし、万が一の時に
「入籍していないから遺族年金はもらえない」
と誤解されている方も少なくありません。
実際には、事実婚でも遺族年金は請求できます。
ただし、条件があります。
そして、その条件を「証明」する準備をしていなければ、受け取れない可能性があります。
この記事では、
「事実婚で遺族年金を受け取るために必要な条件・書類・注意点」
をわかりやすく解説します。
⭐️事実婚についての認定基準は↓↓下記サイトをチェックください。
「事実婚」とは?
ある日の昼下がりの事務所。
花子私たち、入籍していないんですけど、もし、夫が亡くなったとき、遺族年金ってもらえるんですか?



入籍していなくても、いわゆる“事実婚”や“内縁関係”でも、条件を満たせば請求できますよ。



ほんとですか?
入籍していないと、もらえないと思っていました。



実は、そう思っているかたが多いんです。
でも、「条件」を満たしているかがポイントです。


このような関係であれば、遺族年金の対象になる可能性があります。
また、戸籍上すでに他の人と婚姻している(重婚)場合も請求できる場合もあります。
詳しくは、↓↓こちらの記事を見てください😊


同居していても「住所」に注意
遺族年金は、亡くなった人が生計を維持していた方に対して支給されます。
このため、年金事務所では「生計維持関係」を確認するとき、住民票を大切な判断材料にします。



うちは同じ家に住んでましたけど、私の住民票は“2階”って書いてあって、太一さんは“1階”です。
こういうのって関係ありますか?



実は、そこが要注意なんです😅
①住民票が同一世帯 → 問題なし
同居・同世帯であれば、「生計維持関係あり」として扱われます。
②別世帯でも同住所 → 認められる
世帯を分けていても同じく、「生計維持関係あり」として扱われます。
③住所が異なる場合は要注意
認められるにはかなりハードルが上がる。
例えば、
「東京都世田谷区」と「東京都墨田区」など、明確に異なる住所だと、
「別居=生計維持関係がない」と判断される可能性が高くなります。
また、同じ家であっても、
「横浜市〇〇1-1-1 1F」と「横浜市〇〇1-1-1 2F」
のように階数違いで登録していると、別住所扱いになるケースもあります。
そのため、住民票の住所表記を事前に確認しておく必要があります。



同じ一つの家に住んでいるのに、、、、。
来てもらったら、一つの家ってわかるのに💦



何かある前に、住民票の表記を完全一致させられたら良かったですね。
今回のように、住民票が別住所扱いとなる場合、ご自身で「事実婚関係」と「生計維持関係」を証明しなければなりません。
生計維持関係を証明するための書類とは?
住民票が別住所の場合、事実婚の認定では、下記のような書類を複数提出して
「事実婚関係」と「生計維持関係」を証明します。





⑥の場合は、「1つの証拠」ではなく、複数の資料を組み合わせていく方が良いと思います。
そのため、「光熱費」「郵便物」「賃貸契約」「保証人関係」など、生活の実態を裏付ける書類を積み重ねることが大切です。



結構ハードル高いですね、、、💦
高齢のご夫婦は特に注意
高齢の方は、
- 国民健康保険や後期高齢者医療制度に個別加入
→健康保険上の扶養に入っていない - 税法上の扶養に入っていない
- 給与所得がなく、扶養手当の対象でない
というケースが多く、①〜⑤の証明が難しくなってきます💦
その場合は別表6の資料を複数用意する必要になってきます。


これらをいくつか組みあわせて、
“夫婦として暮らしていた”実態を複数の角度から証明することが必要です。
今後の対策
夫婦同然として長年生活してきたが、「住民票は便宜上移していなかった」・「同じ家に住んでいながら住所に”1F”・”2F”となって別居扱いとなってしまうことを知らなかった」ということがあります。
遺族年金がスムーズに受け取れるように、今の状況を確認することが大切です。


おわりに
年金の世界では、「事実婚」や「内縁関係」も夫婦として認められれば、年金の請求が可能です。
しかし、それは“愛の深さ”ではなく、“生活の証拠”によって判断されます。
一緒に過ごした年月がどれだけ長くても、
客観的な書類や記録でそれを示す準備をしていなければ、
いざという時に「生計維持関係が確認できない」とされ、
遺族年金が受け取れないこともあります。
現場では、
「同じ家で暮らしていたのに、住所が1階と2階で別扱いになっていた」
「健康保険の扶養に入っていなかったから証明が難しくなった」
「証明できるものがなくて、認められなかった」
――そんな声を何度も聞いてきました。
だからこそ、元気な今のうちに“備え”を整えておくことが大切です。
遺族年金は、亡くなった後に「気持ち」で判断されるものではありません。
“今ある生活の形を、記録として残す”ことで、
大切な人の想いと生活をしっかりと守ることができます。
事実婚の方のご相談は、年々増えています。
入籍を選ばない生き方も、立派な夫婦のかたちです。
ただし、制度は“形”より“証拠”を求める世界。
だからこそ、「今できる準備」が、のちの安心に変わります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。


