年金小話シリーズ:第1話 【前妻の子 vs 妻とその子】 遺族年金は誰が受取れる?

目次

年金小話シリーズ
〜現場で出会った、秘密にしておきたい13の話〜

シリーズのはじまりに

年金の現場では、書類や数字の奥に「人の人生」があります。

どんなに制度が整っていても、家族の形が複雑になれば、その“線引き”が難しくなることもあります。

この「年金小話シリーズ」では、

私がこれまでの現場で出会ったケースをもとに、

“制度のルール”と“人の想い”の間にある「リアル」をお伝えしていきます。

登場人物はすべて仮名で、

一つひとつの話には、現場で実際に起こりうる出来事が詰まっています。

どうぞ、静かに耳を傾けてください――。

第1話 前妻の子 vs 妻とその子 遺族年金は誰が受け取れるのか?

「元夫が亡くなったあと、私の子も年金をもらえるんでしょうか?」

はじめに

遺族年金は、

「亡くなった人が誰を支えていたか」

により受取れる人が決まります。

しかし、もし“支えられていた家族”が複数あったら――?

今回のケースは、現場でも多いご相談です。

「前妻の子」と「現妻とその子」が同時に遺族になる場合、

誰がどのように年金を受け取るのか?

実際の相談イメージをもとに解説します。

前妻からの相談

窓口に、一人の女性が現れた。

前野花子(前妻)

すみません・・・。
私は離婚していますが、元夫との間に子どもがいます。
今15歳です。
元夫は再婚して、新しい妻と彼女との間に生まれた子どもがいます。
それでも、私の子も、亡くなった元夫の年金をもらえると聞いたんですが・・・。

ととさん

元旦那さんからの、子どもさんに何か経済的な援助はありましたか?

前野花子(前妻)

毎月、子どもへ養育費を5万円、振込んでくれていたんです。
あと、月に一度の面会もありました。

別居でも生計維持関係は認められる場合がある

亡くなった方が前妻の子に養育費を支払っていたのであれば、

“生計維持関係”がある

と認められる可能性があります。
同居していなくても、定期的な援助があれば対象になります。

前妻:花子は少し安心した表情を見せた。

よかった……。
あの子の将来のために少しでも助かれば✨

制度の仕組み ― 支給ルール

しかし、ここで悲しいお知らせがあるんです。

前妻の子は遺族基礎年金と遺族厚生年金を受け取る権利はあるんですが、振り込みされないんです。

どういうことかというと、、、、

支給の原則:子のある配偶者がいる場合は、配偶者に全額支給

今回のケースの場合、遺族基礎年金・遺族厚生年金は、

配偶者(現妻)に遺族年金は現妻の口座に全額振り込まれます。

私の子どもの分もですか⁉️

そうです。

対象者支給内容
現妻遺族基礎年金(本体831,700円+子加算2人分239,300×2)+遺族厚生年金(全額)
前妻の子
現妻の子
遺族基礎年金と遺族厚生年金
両方支給停止

結末:制度の線引きと人の思い

花子は深く息をついた。

亡くなった夫は、私の子どものことも最後まで気にかけてくれていました。
それでも、年金はあちらに全部行くんですね……。

ととさんは静かにうなずいた。

子どもさんの分の遺族年金の受取額や受取り方法を、これから今の奥さんと話し合う必要がでてくると思います。

おわりに

年金という制度は、もともととても複雑です。

そして、人の関係が複雑であればあるほど、

その複雑さはさらに増していきます。

残念ながら、今の仕組みは“家庭の実態”に合わせて柔軟に支給されるものではありません。

それでも現実の中で、どうにか折り合いをつけながら生きていくしかない――。

それが、年金の現場で見てきた正直な姿です。

今回のように、「せめて子どもの分だけでも」という気持ち。

とてもよく分かります。

離婚も、子育ても、そして別れのあとに訪れる手続きも。

そのすべてが、心身をすり減らすほど大変なことです。

亡くなった後までも“遺族年金”をめぐって悩み、

書類と向き合う姿を、私はこれまで何度も見てきました。

制度は、必ずしも人の心を慰めてくれるものではありません。

けれど、今回の小話を通して、

年金制度が時に家族の実態とは異なる結果を生み出すことがある――

そんな現実を少し感じていただけたのではないでしょうか。

これは制度が悪いのではなく、

私たちがその複雑な仕組みを十分に理解しきれていないことから生まれる“すれ違い”かもしれません。

しかし、知っていれば備えることができます。

そして、備えることこそが、大切な家族を守る“力”になります。

まずは、ご自身の家族構成や暮らしを振り返ってみてください。

もしもの時、どのような年金が、誰に、どんな形で支給されるのか――。

気になる方は、ぜひ専門家である年金事務所や社会保険労務士に相談してみてください。

「知らなかった」で損をすることほど、もったいないことはありません。

この小話が、あなたの家族の“もしも”を考えるきっかけとなり、

未来を守る最初の一歩につながれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この「年金小話シリーズ」は、全13回を予定しています。
次回は――

です。

この記事は以前掲載したこちら↓↓の記事を再編集したものです。

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