この記事では「年金にかかる税金って、どうやって計算されるの?」という疑問をわかりやすく解説します。難しい言葉は極力かみ砕いて説明しますので、ぜひ最後までお読みください。
年金にも所得税がかかります
老齢年金は「雑所得」として所得税の課税対象になります。ただし、全額に税金がかかるわけではありません。年金には専用の控除(差し引き)があり、実際に税金がかかるのは控除後の金額だけです。
まず「控除」の種類を整理しましょう
年金受給者に関係する控除は、大きく2種類あります。この2つをよく混同される方が多いので、しっかり整理しておきましょう。
① 公的年金等控除(年金収入 → 所得へ変換するための控除)
年金収入をそのまま課税対象にするのではなく、まず「必要経費相当」として一定額を差し引きます。これが公的年金等控除です。
計算式(65歳以上・令和2年分以後)
| 年金収入 | 控除額(雑所得の計算式) |
|---|---|
| 110万円以下 | 所得は0円(税金なし) |
| 110万円超〜330万円未満 | 年金収入 − 110万円 |
| 330万円超〜410万円未満 | 年金収入 × 75% − 27.5万円 |
| 410万円超〜770万円未満 | 年金収入 × 85% − 68.5万円 |
| 770万円超〜1,000万円未満 | 年金収入 × 95% − 145.5万円 |
| 1,000万円以上 | 年金収入 − 195.5万円 |
具体例:65歳以上で年金収入が270万円の場合
270万円 − 110万円 = 160万円(これが「雑所得」)
この160万円が「年金の所得」として次のステップに進みます。
② 基礎控除(所得から差し引く控除)
公的年金等控除で「所得」を計算した後、さらに基礎控除が差し引かれます。
基礎控除は「人に対して1つ」の控除です。年金収入ごとに複数あるわけではなく、すべての所得を合算した後に1人につき1回だけ差し引かれます。
令和8年分の基礎控除額(合計所得金額による)
| 合計所得金額 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 132万円以下 | 104万円 |
| 132万円超〜336万円以下 | 62万円 |
| 336万円超〜489万円以下 | 62万円 |
| 489万円超〜655万円以下 | 67万円 |
| 655万円超〜2,350万円以下 | 62万円 |
| 2,350万円超 | 逓減・消失 |
※出典:国税庁・日本年金機構HP
税金はこの順番で計算されます
【年金収入】
↓ ① 公的年金等控除を差し引く
【雑所得(年金の所得)】
↓ ② 他の所得と合算する
【合計所得金額】
↓ ③ 基礎控除・社会保険料控除などを差し引く
【課税所得】
↓ ④ 税率をかける
【所得税額】
「基礎控除」と「公的年金等控除」はまったく別物
混同されやすいのですが、この2つは全然違う控除です。
| 公的年金等控除 | 基礎控除 | |
|---|---|---|
| 何のための控除? | 年金収入を「所得」に変換するため | 所得から税額を計算するため |
| いつ差し引く? | 最初(収入→所得の段階) | 後(所得→課税所得の段階) |
| 対象 | 年金収入ごと | 人に対して1回のみ |
| 金額(令和8年) | 110万円〜(65歳以上) | 62万円〜104万円 |
具体的な計算例
条件:65歳以上・年金収入270万円のみ・その他の控除なし
| 計算ステップ | 金額 |
|---|---|
| 年金収入 | 270万円 |
| ① 公的年金等控除 | △110万円 |
| 雑所得 | 160万円 |
| ② 基礎控除(令和8年分) | △62万円 |
| 課税所得 | 98万円 |
| 所得税(5%) | 49,000円 |
| 復興特別所得税(2.1%) | 1,029円 |
| 合計所得税額 | 約50,029円 |
年金が400万円以下なら確定申告は原則不要
年金のみを受け取っている方(年金収入400万円以下・その他の所得20万円以下)は、確定申告が原則不要です。
これは毎月の年金支払い時に行われる「源泉徴収」の中に、公的年金等控除と基礎控除相当額があらかじめ組み込まれているためです。
ただし、確定申告をするとお得な場合もあります。
以下に当てはまる方は確定申告することで税金が戻ってくる可能性があります。
- 医療費が多かった年
- 生命保険料・社会保険料控除を申告していない
- 配偶者・扶養家族がいる
- 住宅ローンがある
令和8年分は12月に精算されます
令和8年度の税制改正により、基礎控除額が引き上げられました。
これに伴い、令和8年12月の年金支払い時に1年分がまとめて精算されます。
- 令和8年2月〜11月:改正前の金額で源泉徴収
- 令和8年12月:改正後の金額で1年分を精算・差額を還付
年金収入214万円未満(65歳以上)の方は、令和8年から源泉徴収の対象外となります。
※出典:日本年金機構「令和8年度税制改正による公的年金等に係る主な改正事項」 https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/kojin/2026/202606/0617.html
まとめ
- 年金収入には「公的年金等控除」が最初に差し引かれる
- その後「基礎控除」がさらに差し引かれる(1人につき1回)
- 年金のみ・400万円以下なら確定申告は原則不要
- 医療費が多い年などは確定申告で還付を受けられる
- 令和8年分は12月に精算・還付される可能性あり
次の記事では、機構と共済の両方から年金を受け取っている方の確定申告について詳しく解説します。
この記事の内容は令和8年6月時点の情報をもとにしています。税制は毎年変わりますので、詳細は税務署または日本年金機構にご確認ください。